たった9人乗りの小さな小さな飛行機でこの島を訪れた
数年前、この島である沖縄映画が撮影されたという
そしてその映画の中で見たある風景に心を打たれ、この島を訪れることとなった
島に到着した後 ひとまず街を散策することにした
自転車でゆっくり走っていると当時撮影に使われた場所がその面影を少しだけ残していた
それは 数年の時が経ち元の暮らしの風景の中に残るわずかな面影であった
翌日再び島を巡った
至る所で道路工事が行われていた
〜
無機質な黒い絨毯へと変わっていく島の道々 〜
島の人達はどう思っているのだろうか
だが少し街を離れると そこには我々の生活では触れることのできない豊かな自然が残っていた
〜 野山を駆け回る半野生の山羊達 日陰で休む牛の群 〜
その風景を眺めているだけで いつの間にか穏やかな気持ちへと変わっていった
しかしその風景も
"外周道路" という化け物によって徐々に壊されようとしていた
〜 自然が豊かな場所だからこそ付きまとう開発の波 〜
その代償に気づくのは果たしていつになるのだろうか
その夜、地元のおばぁと一緒にゆんたくを楽しむこととなった
お酒を飲みおばぁは嬉しそうにこう語っていた
「いま島は工事中ばかりだけど、もうすぐ外周道路もでき 観光客を受け入れられる
もうすぐ島が綺麗になる 他の島に追いつける」
でもね、おばぁ いままでの何も無かった島がよかったのに...
この島に対する思いを語ったとき おばぁは工事をすることにより成り立っている
島の生活について静かに語ってくれた
沖縄一開発が遅れた島
そうおばぁが語ったこの島での最後の夜はしんみりと過ぎていった
翌朝、朝焼けに映し出された重機械はその現実を静かに語っているように思えた
島を去る前、滞在中何度も訪れた場所に再び立っていた
"遠く久米島を眺め 心地よい海の風がなびく丘の上の草原"
映画の中で登川 誠仁氏が静かに語りかけていたこの場所に立つと
映画を見た時と同じ様に心の中で
" Danny Boy" が流れていた
〜 Danny Boy 〜
この場所に重ね合わせていたのは遠く地球の裏側の島で見た風景
"Ireland の西の果て Dingle 半島の海岸線"
の風景そのものであった